米国法人に関する基礎知識
一口に法人といっても日本と同様種類がいろいろあります
事業形態の種類
Sole Proprietor (個人事業主)
事業主が一人であれば、個人事業としてビジネスを始めることができます。事業主が全収益を受け取り、全負債に責任を持つ形態です。その事業から発生する債務について自己責任を負います。なお、事業から発生する利益は個人所得として税務申告を行います。一般的に、新規でのビジネスをはじめやすい形態といえるでしょう。 メリット
- 二重課税の対象にならない
- 設立が容易
- オペレーション・コストならびに税務会計コストがCorporationに安い
デメリット
- ビジネス上の負債・賠償責任に対し、事業主は無限の支払い責任を負う
- 2人以上で資金を出し合うことができない(ただし、妻と夫は1人とみなされる)
- E、L、H-B等のビザが必要な場合、ビザが取得はできない
General Partnership(合名会社)
事業主が二人以上いる場合は、個人事業から発展したGeneral Partnershipsという形態でビジネスを始めることができます。経営・利益分配に参加する権利を共有しあう組合員間で合意がなされることによって形成されます。各組合員は事業から発生する全債務を個人的に保証する無限責任を負います。事業から発生する利益は個人所得として税務申告を行います。 メリット
- 二重課税の対象にならない
- 設立が容易
- オペレーション・コストならびに税務会計コストがCorporationに安い
デメリット
- 最低一人のパートナーが無限責任を負わなくてはならない
- 各々のパートナーが代理責任を負わなくてはならない
Limited Partnership(有限合名会社)
一人以上の全般的な経営権を持ち事業から発生する債務に個人の無限責任を負う一般組合員General Partnerと一人以上の経営権を有せずに個人責任を負わない有限責任の組合員Limited Partnerから成り立つPartnershipの形態です。リミテッド・パートナーシップを設立するためには、州または郡当局に定款の提出が必要です。
Limited Liability Company (LLC)(有限責任会社)
1980年代後半から各州で規定された比較的新しい事業形態です。一人以上のオーナーを持ち、設立する州のSecretary of State(州務長官事務局)に登録申請を行って正式に設立されます。カルフォルニアの場合、外国人1人の場合でもLLCを設立することができます。LLCは会社としての属性を維持し全ての出資者の有限責任であることが認められながら、税法上は、事業の利益は個人所得として申告することによって二重課税を回避することができます。
メリット
- 個人の無限責任が回避できる
- 設立が容易
- オペレーション・コストならびに税務会計コストがCorporationに安い
デメリット
- LLCは日本でいうところの「有限会社」となりますので、日本サイドでの企業イメージを重視される方の中にはLLCを好まない方がいます
Limited Liability Partnership (LLP)(有限責任会社)
パートナーシップの各組合員が他の組合員の責任を有限とした事業形態です。LLPは、LLCに似た特徴を持っていますが、各パートナーの責任範囲の規定など州によって異なります。カリフォルニア州では、弁護士、会計士などのProfessionals(専門家)しか LLPの形態でビジネスを行うことができませんので、ご注意下さい。
C Corporation(C株式会社)
事業形態は一般的な株式会社。日本人が、アメリカで起業するのにもっとも適した企業形態と言えるでしょう。個人の無限責任は避ける事ができ、事業主は投資した額に限定されて賠償責任を負います。税法上は、会社は事業利益を法人所得として申告し、株主への配当金はさらに個人所得として申告する、いわゆる二重課税となっています。
メリット
- 株主数の制限なし
- E、L、H-1Bビザを取得したい場合、ビザの取得は容易
- ビジネスの成長過程で必要な資金の調達が容易で、将来株式公開も可能
デメリット
- 法人、株主の双方に課税され、二重課税を完全に防ぐことはできない
- 税務会計処理が複雑、コストがかかる
- オペレーション・フォーマリィティーの要求によりコストがかかる
S Corporation(S株式会社)
税制を優遇した企業形態。Corporationの一種ですが、小企業の多くは内国歳入庁に対しsubchapter Sを選択することによって一般の法人課税が免除されます。
しかしながら、subchapter Sを選択するためには、株主はアメリカ居住者か、Green Card Holderであるという規制があります。従って、非居住の外国人がこの選択を行うことはできません。また、株主は35名以内となっています。メリット
- 二重課税の対象にならない
- 特定の場合を除いて連邦レベルの法人への課税なし
- 個人の無限責任が回避できる
- E、L、H-1Bビザを取得したい場合、ビザの取得は容易
デメリット
- 株主は100人以下でなければならない。
- 株主の全ては米国に在住する個人あるいは米国市民でなければならない (米国外に在住している外国人や外国法人は株主になれない)
- 税務会計処理が複雑、コストがかかる
*LLCもしくはC Corporation、S Corporationの法人形態での登記が一般的です。
アメリカ法人の税金
連邦法人税
アメリカの全ての内国法人(連邦法あるいは州法により設立された会社)は原則として連邦法人税の申告を行う必要があります。申告期限は、事業年度末の3ヵ月後の15日までです。
外国支店を持った法人は、外国支店の所得を合算して申告します。しかしながら、日米租税条約により既に外国で課税された税額については控除もしくは損金参入とすることができます。
課税所得 | 課税所得から以下の額を除く | 税額 | |
---|---|---|---|
以上 | 未満 | ||
$0 | $50,000 | - | 15% |
50,000 | 75,000 | 50,000 | $7,500+25% |
75,000 | 100,000 | 75,000 | 13,750+34% |
100,000 | 335,000 | 100,000 | 22,250+39% |
335,000 | 10,000,000 | 335,000 | 113,900+34% |
10,000,000 | 15,000,000 | 10,000,000 | 3,400,000+35% |
15,000,000 | 18,333,333 | 15,000,000 | 5,150,000+38% |
18,333,333 | - | - | 35% |
カリフォルニア州税
フランチャイズ税
フランチャイズ税の計算には、「授権資本株式数を基準とする方法」と「資本金額を基準とする方法」の2通りがあり、いずれか少ない方を税額とします。一般的には授権資本株式数を3,000株以下にすることによって、税額を最低の$35にすることができます。
・授権資本株式数を基準とする方法
授権資本株式数 | 税額 |
---|---|
3,000株以下 | $35 ??? |
3,001~5,000株 | $62.5 ??? |
5,001~10,000株 | $112.5 ??? |
10,000株を超える | 10,000株ごとに$62.5追加 ??? |
・資本金額を基準とする方法
(1)「みなし無額面資本」(無額面株式の授権株式数に100ドルを乗じたもの)の税額と(2)「みなし額面資本」(総資産を発行済株式数で除し、発行済株式1株あたり総資産に対する授権額面株式数を乗ずる)の税額の合計が税額となります。
(1) みなし無額面資本金額
みなし無額面資本金額 | 税額 |
---|---|
$30万以下 | $35 ??? |
$50万以下 | $62.5 ??? |
$100万以下 | $112.5 ??? |
$100万超 | $100万ごとに$62.5追加 ??? |
(2) みなし額面資本金額
みなし額面資本金額 | 税額 |
---|---|
$100万以下 | $250 ??? |
$100万以上 | $100万ごとに$250追加 ??? |
所得税
デラウェア州内で事業活動を行わない会社は、申告および課税は免除されます。デラウェア州内で事業活動を行った場合の税率は8.7%です。